シチリア菓子とは?カンノーロやカッサータなど伝統菓子とパレルモの名店

シチリア旅行で絶対に避けて通れない(そして、絶対に避けたくない!)のが、色鮮やかで個性豊かなシチリア伝統菓子でしょう!

街を歩けば、お菓子屋さんのショーケースに、美しく並ぶお菓子たち。

本物のフルーツみたいな砂糖菓子:フルッタ・マルトラーナ

時には「えっ、なにこれ?」と思わず二度見してしまうようなディスプレイに出会うことも、シチリアの日常風景です。

レストランのデザートで、あるいは街歩きの途中にふらりと立ち寄ったバールで。どうしたって、1日に一度は甘い誘惑に襲われるのがシチリアの日常です(そして負けるw)。

せっかくシチリアに行くのなら、この際カロリーは気にせずに、目眩くシチリアン・スイーツの甘い世界に絆されて、本物の『ドルチェ・ヴィータ甘い生活』を体験してみるのが、旅の醍醐味。

とはいえ、どこのお店も美味しい!というわけにはいかないのが、世の常です。脳天を突き抜けるような強烈な甘さばかりが印象に残ってしまうお店もあれば、「え、和菓子……?」と錯覚するほど繊細で上品な甘さを守り続けているお店も。

ここでは、シチリア菓子の歴史や背景から、現地で愛される伝統菓子、そしてパレルモ暮らしでご贔屓にするお気に入りのお店を、現地パレルモからご紹介します♪

シチリア菓子と「修道院」の深い関係

なぜシチリアのお菓子は、これほどまでに濃厚で、個性的で、バリエーション豊かなのでしょうか。

そのルーツを深く掘り下げていくと、行き着くのは「修道院」です。

かつてシチリアがアラブの支配下にあった時代に伝わった砂糖やナツメヤシ、柑橘類、アーモンドといった素材。それらの貴重な食材を使い、修道女たちが祈りと共に代々つくり続けてきた手仕事こそが、現代に伝わるシチリア菓子の原型です。

1700年代後半のパレルモには、70を超す修道院が存在。それぞれの修道院が競い合うように作ったお菓子があり、当時の貴族の催し、カーニバルやイースターなどの宗教イベントなどで寄付・注文販売がされ、修道院にとっては非常に重要な財源(運営費)となっていました。

出入り禁制(クラウズーラ)の修道院の場合、「ルオータ・デル・オッフェルタ(回転式の受取口)」にお金を置き、クルッと回してお菓子を受け取るスタイルで販売。

パレルモのサンタ・カテリーナ教会に、今も残る回転式受け取り口

シチリア菓子には、「甘い」だけではない、それぞれ長い歴史とロマンが詰まっているのです。

これが本物!伝承レシピを再現したパレルモの名店

そんなお菓子たちの伝統のレシピは、修道院の中で口頭のみで密かに伝承されるのみだったため、修道院を出た子女(当時、貴族の子女は修道院で学ぶ習慣があった)から漏れ伝わったレシピや、真似て作られたお菓子はあっても、本物のレシピではない。今や、修道女も消えつつある中、受け継がれてきた伝統レシピも消えてしまう…。

ということで、パレルモ人ジャーナリストのマリア・オリヴェーリさんが、各修道院への取材を重ね、伝承レシピを発掘!

マリア・オリヴェリさんの著書「回廊の秘密」
各修道院とお菓子の歴史とレシピが紹介されてます!

有名シェフと共に再現したシチリア菓子を、なんとパレルモの修道院の中で販売するというプロジェクトがスタートし、地元スイーツラバーの間で話題になっています。

▼詳細、お店データは、CREA WEB(クレアトラベラー)の連載記事でご紹介しています。

かつてパレルモの修道院でシスターたちが作っていた伝統菓子の多くは、時代の流れとともに失われつつありました。しかし近年、サンタ・カテリーナ修道院の中に、口頭でしか伝えられてこなかったレシピを研究・再現したお店「イ・セグレーティ・デル・キオストロ(回廊の秘密)」がオープン。

ヴェルジニ修道院の90代の修道女への取材から発掘された、本物のカンノーリやカッサータ、幻のお菓子『トリオンフォ・デル・ゴーラ』など、本物の味が今に蘇り話題を呼んでいます。

[修道院の伝統レシピで再現した本物のシチリア菓子に夢心地|CREA WEB]

追記:こちらは2023年にクレア・トラベラー夏号の取材でお邪魔した時の記事です。今や行列ができる人気店に!

こちらのお店では、各修道院の名物お菓子がずらりと並び、もちろん、カンノーロも!

修道院の元キッチンを改装した店内で、作りたてのカンノーロを!

パレルモに行くなら、マストのお菓子屋さんの一つです!

まずはここから!王道の「カンノーロ」と「カッサータ」

さまざまなシチリア菓子がありますが、なんといってもまずは基本の2大巨頭。「カンノーロ(Cannolo)」と「カッサータ(Cassata)」は覚えておきたいですね!

カンノーロ|サクサクの筒状パイに、新鮮なリコッタがぎっしり

薄く伸ばした生地を筒状に揚げ、中に新鮮なリコッタチーズのクリームをたっぷり詰めたお菓子。シチリアのどこでも買えますが、味はピンからキリ!

大切なのは「リコッタの新鮮さと、皮のサクサク感。そして適度な甘さ」です。

前述の「セグレーティ・デル・キオストロ(回廊の秘密)」の美しいカンノーロ

その辺のバールに山積みになってなるグッタリした雰囲気のカンノーロを食べて、「こんなもん?」と思ってしまう危険がありますw。その手のカンノーロは、脳が痛くなるくらい極甘かったりも…。

サクサク感を損なわないため、注文を受けてからその場でクリームを詰めるのが本場流。できるだけ「パスティチェリア」(お菓子屋さん)で食べたいものです。

▼パレルモから一足伸ばしても行ってみたい!カンノーロの本場ピアナ・デイ・アルバネージ

カッサータ|アラブと修道院の美学が詰まった宝石

スポンジケーキにリコッタクリームを重ね、緑色のマジパンと色鮮やかな砂糖漬けの果物(ドレンチェリーやオレンジピール)でデコレーションした、まさにシチリアン・バロックを思わせる美しいケーキです。

パレルモの名店のひとつ「ALBAアルバ」の豪華なカッサータ・シチリアーナ

もともとはアラブ時代に持ち込まれた素材から始まったカッサータは、中世に修道院のシスターたちが野菜から抽出した色素で緑のマジパンを組み合わせることで発展。

19世紀に、パレルモの有名菓子職人サルヴァトーレ・グラートが、ウィーン万博(1873年)に出品するために、フルーツの砂糖漬けでゴージャスにデコレーションしたのが、今に見る華やかなカッサータの原型になっています。

こちらもパレルモの名店「CAPPELLOカッペッロ」のカッサータ

パレルモでは、イースターや特別な日のためのお菓子としていただくことも多いです。

普段は、一人用サイズの「カッサティーナ」。

またまたこちらも名店「COSTAコスタ」のカッサティーナ。奥は、カンノーロ♪

ゴージャスなカッサータを一切れサイズにしてくれるお店もありますが、旅行の時なら、「カッサティーナ」が気楽で良いかもですね!

季節と食べる日が決まってる伝統のシチリア菓子

旬の食材を使ったり、1年を通して何かしらある宗教のお祭り(カトリックの祝祭日)と結びついているのも、シチリア菓子の大きな魅力。

移り変わる季節と共に「今、この時期にしか食べられない」お菓子が登場する文化は、どこか日本の和菓子や歳時記にも似ていて、親近感も湧きます。

昔ながらの伝統と季節の到来を告げるように、街のパスティッチェリアやバールのショーウィンドーが装いを変える。季節ごとに楽しむシチリア菓子をご紹介します。

アニェッロ・パスクアーレ|復活祭を告げる羊の砂糖菓子

キリストの復活を祝うイースター(パスクア)では、イタリア全土では「卵型のチョコレート」や鳩の形をした焼き菓子「コロンバ」が並びます。

ここシチリアでは、なんといっても羊の形の砂糖菓子(アニエッロ・パスクアーレ)でしょう!田舎町に行けば、まさかのゆで卵を殻付きで巻き込んだ伝統のパン菓子「クッドゥーラ」も見つかります。

ずらりと並ぶとちょっと怖いw!羊の形をしたアニェッロ・パスクアーレ

アーモンドペースト(マジパン)で作られた羊たちに見つめられると、「ああ、春が来たな」と実感するのがシチリアライフ。

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また、前述の「カッサータ」も、イースターを祝うための特別なお菓子でもあり、パスクエッタ(イースター・マンデー)のBBQには欠かせません。

ジェーロ・ディ・メローネ|パレルモの夏を潤すスイカゼリー

地中海の太陽か降り注ぎカラリと暑いシチリアの夏。パレルモでは、旬のスイカをたっぷり使った「ジェーロ・ディ・メローネ(Gelo di Mellone)」が登場します。

シチリアでは「メローネ」はスイカのこと。つまり、「スイカのゼリー」

ゼリーというからプルプルした繊細なお菓子かと思いきや、独特なブルブル食感が特徴で、朝摘みのジャスミンの花の香り、シナモンを効かせたフレーバーは、いかにもアラブ文化の影響を強く残す、エキゾチックで華やかな味わいの伝統菓子です。

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フルッタ・マルトラーナ|本物の果物そっくり!パレルモ修道院発の王様のお菓子

アーモンドパウダーと砂糖(または蜂蜜)を練り合わせた「パスタ・レアーレ(王様の生地)」をベースに、職人さんが一つひとつ手作業で仕上げる「フルッタ・マルトラーナ」。

本物そっくりの果物や野菜の造形美は、その発祥の秘話に由来があります。

起源はパレルモのマルトラーナ修道院。12世紀に、パレルモのマルトラーナ修道院のシスターたちが、秋の寂しい庭園を訪問する王様に見せようと、アーモンド生地で本物そっくりの果物を作って木々に吊るしたのが始まりとされています。

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11月1日の「諸聖人の日(万聖節)」と11月2日の「死者の日(万霊節)」のお菓子としても知られていますが、見た目の愛らしさと日持ちの良さから、今では年間を通してパレルモのお土産としても愛されている、シチリアを代表する歴史深い伝統菓子です。

イタリアのハロウィン?死者の日のシチリア菓子

素敵なフルッタ・マルトラーナもあれば、死者をイメージするような「オッソ・デイ・モルティ(「死者の骨)」や、見た目が怖い「プーピ・ディ・ズッケロ(砂糖人形)」なども、パレルモの伝統季節菓子。

お土産にするか?食べてみたいか?はさておいて、一応、ご紹介しておきますw。

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クッチーア|12月13日”小麦を食べない日”の甘い伝統

12月13日は、サンタ・ルチアの日。

1646年、深刻な飢餓に苦しんでいたパレルモに、12月13日に小麦を積んだ船が港へ到着し、飢餓を救った…サンタ・ルチアの奇跡として、感謝と敬意を込め、この日は「パンやパスタなどの小麦製品を一切食べない」という風習が、今も受け継がれています。

パン屋さんがお休みになるため、別名アランチーナの日とも呼ばれ、パレルモでは、名物のアランチーナを食べますが、デザートでセットでいただくのが、「クッチア(Cuccìa)」。

名店「シャンパーニャ Champagna」のチョコレート・クッチア

茹でた小麦粒に甘いリコッタクリームやチョコレート、オレンジピールを和えたスイーツで、プチプチした食感と濃密なリコッタの甘さが絶妙な美味しさを奏でる、この日限定のお菓子です。

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ブッチェッラート|ドライイチジクとスパイス香るクリスマスの伝統菓子

イタリアのクリスマス菓子といえば、「パネットーネ」や「パンドーロ」ですが、シチリアには、「ブッチェッラート(Buccellato)」があります!

ラテン語で「かじり取る」を意味する「buccellatum」に由来し、古くから親しまれてきた歴史ある伝統菓子で、ビスケット生地の中に、天日干ししたドライイチジク、レーズン、オレンジピール、くるみや松の実など、シチリアの名産品をぎっしりと詰めて、シナモンなどのスパイスと共に焼き上げます。

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華やかなリング状のものから、一口サイズまであり、パレルモでは豪華に飾るスタイルが主流ですが、内陸部や他の地域では、粉糖をシンプルに振っただけのものなど、地域や家庭ごとに異なるタイプも。

マルサラの友達のマンマから届いた素敵な包みを開けると…
手作りのブッチェッラート!こんな素朴なタイプもあります

日持ちがするので、クリスマスシーズンのシチリア旅行のお土産にもぴったりですよ。

スフィンチ・ディ・サンジュゼッペ|イタリアの父の日を祝う巨大揚げシュー

キリストのお父さん「サン・ジュゼッペ」の日(3月19日)が、イタリアの父の日。パレルモでこの日に食べる伝統菓子が、「スフィンチェ・ディ・サン・ジュゼッペ(Sfinci di San Giuseppe)」です。

手に乗せた感じは、チワワと似てるスフィンチェ

アラビア語で「スポンジ」を意味する言葉が語源とされるスフィンチェ。もともとはシンプルな揚げパンだったのが、パレルモの修道院でシュー生地にリコッタクリーム、ピスタチオ、チェリーを贅沢にトッピングするスタイルに進化したと言われています。

大きさも特徴的で、手のひらに乗せるとはみ出すくらい。持った感じは、チワワに似ていますw。

なぜこんなに大きいのか?この大きさはパパの大きさみたいなものなのか?どの店でもチワワサイズを売っています。3月19日は、各店で何百個も用意。朝からチワワが飛ぶように売れていく様子が見られます。

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パスティッチェリアとバール、バールで食べるシチリア風の朝ドルチェ

こういったシチリア伝統菓子は、やはり「パスティッチェリア(Pasticceria)」お菓子専門店で食べるのがオススメです。名店、老舗のパスティチェーレ(菓子職人)が腕によりをかけた自慢の味を食べ比べてみるのも楽しいはず。

パレルモだったら、なんといっても前述の「I segreti del Chiostro (回廊の秘密)」は外せません。また写真の各キャプションでご紹介しているお店も、ぜひ検索してみてください!

街のどこにでもあるバールで食べるシチリアらしい朝ごはん

パスティチェリアの他、街の至る所にある「バールBar」でもお菓子を見かけることがあります。バールは、立ち飲みでエスプレッソや軽い朝食、おしゃべりを楽しむ街の交流拠点。

バールに並ぶお菓子は、伝統菓子というよりは、主に朝食用のドルチェ。早朝から、焼きたてのコルネットやドーナツが、カウンターにズラリと並びます。

コルネットとファゴッティーノ

▼現地での注文方法や朝食文化の疑問、パレルモのおすすめカフェをご紹介しています。

やはり、シチリアだったら名産のピスタチオクリームのコルネットはマストです!

シチリア菓子はシチリア旅行の醍醐味!

アラブやノルマンなど多様な文化が交差し、修道院の歴史の中で独自に発展してきたシチリアのお菓子たちは、地中海の太陽と肥沃な大地がもたらす豊かな食材と共に育まれた、「シチリアの味」。

シチリアを訪れた際は、ぜひ現地ならではの甘い文化を五感で楽しんでみてくださいね。

今回は、州都パレルモを拠点にした代表的なものや有名なものを中心にご紹介しています。言ってみればほんの一部…シチリア各地に目を移せば、まだまだ!知らないシチリア伝統菓子が見つかりますよー(そのうち追記しますw)。

どうぞ記憶に残る美味しいシチリア菓子との素敵な出会いがありますように!

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